お知らせ

大阪大学とがん治療薬の実用化に向けた「アスタチン核医学治療社会実装共同研究部門」を設立

2026年01月19日

住友重機械工業株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:渡部敏朗、以下「当社」)は、国立大学法人大阪大学(本部:大阪府吹田市、総長:熊ノ郷淳)と「アスタチン核医学治療社会実装共同研究部門(以下「本共同研究部門」)」を大阪大学核物理研究センターTATサイクロトロン棟内に設立しました。

本共同研究部門は、がん細胞をピンポイントで攻撃できる新しい治療法として注目されている、アスタチン-211(At-211、原子番号85、半減期7.2時間)を用いたアルファ線核医学治療薬の実用化に向けて、その原料となる放射性同位体At-211を、薬剤原料として安定的かつ高品質に製造・供給するための技術基盤および品質標準を確立することを目的としています。
大阪大学核物理研究センターTATサイクロトロン棟内で構築される本共同研究部門の研究開発成果を基に、当社が市場供給を担う体制の下で、産学官が連携し、At-211を基盤とする新規アルファ線核医学治療薬の実用化と普及を支える持続的な社会実装基盤の構築を進めてまいります。

【アスタチン核医学治療社会実装共同研究部門の概要】
部門設置場所 大阪大学核物理研究センターTATサイクロトロン棟
目的 同棟内に設置されたアスタチン製造システム*を基盤として、薬剤原料としてのAt-211の製造装置および製造プロセスの開発を進めるとともに、市場供給可能なレベルでの大量安定製造と品質標準化を実現し、製造から供給に至る事業化体制の構築を研究目的とします。
*一部、フロンティア開発プロジェクトにて技術本部の支援を受けて開発されたものです。

補足 -標的アルファ線核医学治療とアスタチン-211(At-211)-
標的アルファ線核医学治療は、がん細胞に選択的に集積する薬剤にアルファ線放出核種を結合し体内に投与することで、正常組織への影響を抑えつつ、全身に存在するがん細胞を高効率に殺傷する治療法です。アルファ線は飛程が短く線エネルギー付与(LET)が高いため、Lu-177やI-131などのベータ線放出核種による治療と比べ、難治性腫瘍や微小転移に対して高い治療効果が期待されています。
At-211は、この治療に適した放射性核種の一つです。At-211はハロゲン元素に属し、ビスマス-209(Bi-209)を標的としてサイクロトロンにより安定的に製造できます。単回のアルファ壊変で安定核種に至るため、壊変生成物による体内移行や副作用の懸念が小さい点も重要な特長です。
さらに、At-211はハロゲン元素であることから、低分子化合物やペプチド、抗体断片などに直接化学結合でき、既存の放射性医薬品設計の枠組みを活かした幅広い応用が可能です。これらの特長から、At-211は製造の現実性、薬剤設計の柔軟性、安全性、高い治療効果を兼ね備えた、次世代の標的アルファ線核医学治療を支える中核的核種として国内外で注目されています。