人権尊重
基本的な考え方
住友重機械グループは、「経営理念」において、重視する価値観の一つに「人間尊重」を掲げるなど、人権を尊重した経営を推進しています。
事業のグローバル化に伴い、バリューチェーン全体での人権への配慮が重要であるとの認識を強め、「住友重機械グループ人権方針」を策定し、グループ一体となった人権尊重の取り組みを強化しています。
住友重機械グループ人権方針
当社グループは、2023年2月に取締役会の決議により「住友重機械グループ人権方針」を策定し、2025年7月に改正しました。今回の改正では、国連グローバル・コンパクトの10原則の実践を明記し、人権尊重へのコミットメントをより強く打ち出しています。
本方針は、外部有識者やNGOの意見を踏まえるとともに、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的な規範や、経済産業省のガイドライン※を参照しています。
※2022年9月策定「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
- 1基本的な考え方
私たち住友重機械グループは、「住友の事業精神」並びに当社グループの「パーパス」及び「経営理念」に基づく企業倫理のもと、社会に対する強い使命感を持ち、事業活動を行っています。
また、私たちは、住友グループの発祥の地である別子銅山で使用する機械・器具の製作と修理を担う工作方を祖業の一つとし、独自の技術力によって、機械化による労働環境の改善に寄与してきました。
私たちは引き続き、「企業使命」実現のため、誠実にステークホルダーと向き合い、人権尊重に最大限取り組みます。
なお、本方針におけるステークホルダーの中には、従業員をはじめとしてお客様、ビジネスパートナー、地域住民、株主・投資家などが含まれます。 - 2本方針の位置づけ及び適用範囲
本方針は、住友重機械グループの業務に従事するすべての役員、従業員及び派遣社員(以下「役員・従業員など」)に対して適用される、人権に関する最上位の方針です。
また、私たちは、本方針をお客様やビジネスパートナーの皆さまにも実践していただくことが重要であると考えています。本方針及び住友重機械グループの調達に関するガイドラインなどの理解と実践をビジネスパートナーに働きかけ、ともに社会的責任を果たします。 - 3国際規範・法令などの遵守
私たちは、世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した国際規範(「国際人権章典」、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」、「OECD 多国籍企業行動指針」など)を支持・尊重した事業活動を行います。
また、国連グローバル・コンパクト(UNGC)の10原則を実践し、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に対する責任を果たします。
さらに、事業活動を行う国または地域においては、当該国または地域の法令などの遵守徹底に取り組みます。
万が一、事業を行う当該国または地域の法規制と国際的な人権規範との間に矛盾が生じる場合には、より高い基準に従って問題を改善するための方法を追求します。 - 4人権尊重に対する責任
私たちは、自らの事業活動が直接的または間接的に人権への負の影響を及ぼす可能性があることを理解しています。ステークホルダーの人権を侵害しないよう、最大限配慮し適切に対処することで人権尊重の責任を果たします。
(1)差別の禁止: 年齢、国籍、人種、民族、出身、宗教、信条、政治的指向、婚姻状態、家族構成、性別、性的指向、性自認、障がい、雇用形態などによるいかなる差別も認めません。
(2)ハラスメントの禁止: セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなど、個人の尊厳を傷つける一切のハラスメント行為を許容せず、心理的安全性が担保された風通しのよい組織風土を醸成します。
(3)ダイバーシティの推進: ダイバーシティ推進を重要な経営課題と位置づけ一人ひとりの多様性を尊重し、互いに受け入れ、誰もがその人らしさを失わずいきいきと働ける職場づくりを推進します。
(4)結社の自由と団体交渉権の尊重: 労働者が有する結社の自由、団体交渉を行う権利を尊重し、正当な労働運動により不利益を受けることがない、公正な労使関係を構築します。
(5)強制労働・児童労働などの禁止: 人身売買、暴力・脅迫・債務などによる強制労働、児童労働、現代奴隷を認めません。
(6)安全で健康的な就労環境の提供: 労働安全衛生に積極的に取り組み、安全で健康的な働きやすい就労環境を提供するとともに災害・事故の撲滅に努めます。
(7)適正な賃金の支払い: 事業活動を行う国・地域の法定賃金を遵守するとともに、基本的な生活を営むことができる生活賃金を満たす報酬を設定し、これを支払います。
(8)労働時間の管理: 法令に基づき労働時間を適切に管理し、十分な休日確保・休暇取得を促進します。
- 5人権デュー・ディリジェンス
私たちは、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、第三者機関とも協力して人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施します。
この活動を通じ、人権への負の影響の特定、その防止・軽減を図ります。 - 6対話
私たちは、ステークホルダーとの対話と協議を継続的に行うことにより、人権尊重の取り組みの改善を図ります。
- 7教育・理解促進
私たちは、役員・従業員などに対して、当社グループの事業活動において本方針が確実に実践されるよう、継続的な教育を実施します。
また、ビジネスパートナーに対しては、サプライチェーン全体で人権尊重が推進されるよう、情報共有や協働の機会を積極的に設けます。 - 8救済へのアクセス
私たちは、自らの事業活動が直接的または間接的に人権に対して負の影響を与えたことを認識した場合、適切な手段を通じて速やかに救済措置を講じ、必要に応じ、ビジネスパートナーとともに是正に取り組みます。この過程では、通報者に対する報復などの不利益な取扱いを禁止し、通報者を保護します。
- 9情報開示
私たちは、これまでの項で述べた人権尊重の取り組みの進捗を当社ウェブサイトや報告書などを通じて定期的に情報公開します。
マネジメント体制

人権尊重の取り組みは、取締役会の監督のもと、常務執行役員企画本部長が責任者となり推進しています。これらの取り組み状況については、サステナビリティ委員会で議論し、その審議内容を取締役会に定期報告(2回/年)しています。
また、人権に関する取り組みは、当社グループのあらゆる事業活動やステークホルダーに関係するため、2021年12月に全社横断の人権リスクPJ(プロジェクト)を立ち上げ、同PJで決定した取り組み計画に基づき、人権尊重の各種取り組みを進めています。
国連グローバル・コンパクトへの参画

2025年1月に当社グループとして支持を表明しました。これを機に、グローバルスタンダードに準拠した対応をステークホルダーの皆様とともに一層強化し、グローバル社会の一員としての役割を果たしていきます。
人権デュー・ディリジェンス
国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権への影響を特定、予防、軽減するための一連の取り組みとして、リスクの高い領域を中心に、優先順位をつけて人権デュー・ディリジェンスを実施しています。
人権リスク特定プロセス
当社グループは、グローバルサプライチェーンを構築するとともに、世界各地に製造拠点を有しています。グローバルの視点での労働者の人権確保の観点から、人権リスクを整理し、特定しました。
対象範囲 | 人権リスク特定プロセス | |
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当社グループ | 「人権リスクの深刻度」「当社への影響度」の2軸で分析の結果、国内における外国人技能実習生と構内協力会社・派遣労働者の人権リスクが高いことを特定 | |
国内サプライチェーン | 「当社向け売上比率」が高く、「外国籍社員数」が多いサプライヤーを潜在的高リスクサプライヤーと特定 | |
海外サプライチェーン | 「労働集約度」が高く、「地域の給与水準(1人当たりのGDP)が低い地域のサプライヤーを潜在的高リスクサプライヤーと特定 |

人権デュー・ディリジェンス実施状況/2024年
実施項目 | 結果・課題 |
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労働環境調査 NGO「一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(以下ASSC)」と共同で当社グループのサプライチェーン上の労働者の労働環境調査を実施。 ![]() |
調査対象
結果・課題 直ちに保護が必要など人命に関わる深刻な問題はなし。ただし、雇用契約における帰国後の就労継続条項が確認され、当社グループ関連工場においては条項の削除および是正に向けた見直しを実施。 |
構内協力会社・派遣労働者の人権尊重 構内協力会社から人権尊重の「誓約書」の受領、派遣会社との人権尊重の「覚書」の締結の取り組みを、優先順位をつけて順次実施。 |
調査対象 主要製造所である千葉製造所、愛媛製造所にて実施。 結果・課題 本取り組みを通じ、人権への負の影響をなくしていくことにより、働きやすい職場環境の整備を徹底。 派遣会社との覚書締結率(100%)※1、協力会社からの誓約書受領率(93%)※2。当社グループ売上高によるカバー率向上を優先し、今後は既存の監査システムに織り込むなどの対応を検討中。 ※1 2024年12月末までの累計 ※2 売上高による目標実施率80%(2024年12月末までの累計 56.3%) |
これまでに実施した人権デュー・ディリジェンスの概要
2021年 | 「人権リスクPJ」発足 人権デュー・ディリジェンスの準備開始 | |
2022年 |
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2023年 |
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サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンス
■国内潜在的高リスクサプライヤーへの実地調査
サステナビリティ重要課題の一つである「持続可能なサプライチェーンの構築」の重点施策として、人権侵害を受けるリスクが高いとされる外国人労働者の人権尊重を掲げています。外国人労働者の雇用者数と当社グループへの売上高比率によって重点フォロー対象とするサプライヤー24社を特定の上、「潜在的高リスクサプライヤー」と定義し、2026年までに全ての対象サプライヤーに実地監査を行い、必要に応じ是正処置を促すことを目標としています。2024年度は8社に対して調査を実施し、直ちに保護が必要など人命に関わる深刻な問題はありませんでした。なお、個人保護具の着用、避難経路図の設置など労働安全衛生面の改善点については、働きかけを実施しました。
調査実績/社数 | ||
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2023年度 | 7社 | |
2024年度 | 8社 | |
2025年度(予定) | 5社 | |
2026年度(予定) | 4社 |
■海外サプライヤーへの実地調査
海外の取り組みとしては、人権リスクPJで実施しているグローバルサプライチェーンのリスク分析に基づき、当社グループの工場・拠点がある地域を中心にサプライヤーの調査を行っています。これまでの調査の結果、直ちに保護が必要など人命に関わる深刻な問題はありませんでしたが、労働安全衛生面で注意すべき点などをサプライヤーに改善の働きかけをしています。なお、海外のサプライヤー調査にはNGOによる実施を含みます。

これまでの活動実績 | ||
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2023年度 | フィリピン | 1社 |
2024年度 | インドネシア | 2社 |
ベトナム | 3社 | |
韓国 | 4社 | |
フィンランド | 1社 |
■CSR調達説明会の実施
CSR調達ガイドラインの周知を目的として、2024年度は5つの事業部門に対して説明会を実施しました。サプライチェーン全体で人権尊重や、気候変動などのサステナビリティ課題に一層配慮した事業活動を推進し、強靭で持続可能なサプライチェーンの構築を進めます。
人権に関する相談窓口(グリーンバンスメカニズム)
サプライチェーン上の関係者向けに、「サプライヤー専門のお問い合わせ窓口」を当社ウェブサイトに開設しました。
適切なプロセスおよび情報管理下での相談者・通報者の保護を最優先として救済に取り組む準備を進めています。
役員および従業員教育

■役員研修会
2023年9月、当社グループの役員および事業責任者39名を対象に、ASSC代表理事の和田征樹氏を講師としてお招きし、「SHIグループの人権尊重への取り組み評価と今度の課題」と題した勉強会を実施しました。本勉強会では、当社グループにおける人権リスクの認識を深めるとともに、サプライチェーン全体における人権への配慮の重要性について理解を深めました。


■従業員教育
人権デュー・ディリジェンスの取り組みの一環として、人権教育を実施しています。階層別教育、eラーニング、社長メッセージの配信、グループ報「かるテット」など、人権に関する教育、啓発を継続的に実施し、グローバルな人権課題の理解に基づく人権意識向上を図っています。また、2023年2月の人権方針策定の際には、日本語、英語、中国語の3か国語による社長説明動画を全従業員に配信し、目的や重要性を解説、周知しました。
トピックス
■インドネシア労働環境調査
2025年4月、インドネシアのサプライヤー2社を対象に労働環境調査を実施しました。書類による調査、作業環境の確認、インタビューを実施したところ、直ちに保護が必要など人命に関わる深刻な問題はありませんでしたが、個人保護具の着用、消火器の適切な配置など労働安全衛生面の改善点については、働きかけを実施しました。今後も優先順位をつけて、継続的に実施します。
■構内協力会社・派遣労働者の人権尊重の取り組み
人権リスク特定プロセスにおいて、国内における構内協力会社・派遣労働者の人権リスクが高いことから、構内協力会社から人権尊重の「誓約書」の受領、派遣会社との人権尊重の「覚書」の締結の取り組みを実施しています。まずは、当社製造所内にて事業を行っている事業部門や外国人技能実習生の労働環境調査を実施した事業部門の中から優先順位をつけて実施しています。2025年上期には、主要製造拠点の一つである横須賀製造所において実施しました。