気候変動への対応
「気候変動」は現在の私たちが直面する非常に重要な課題です。2020年3月に取締役会で決議した7つのサステナビリティ重要課題の1つとして「環境負荷の低減」を設定するとともに、「中期経営計画2023」においても「気候変動」を当社グループが解決に貢献すべき社会課題と捉え、取り組みを進めています。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応

当社は2021年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD(注1))」の提言に賛同しました。
2022年5月には、取締役会での決議を経て、2050年までに当社グループ全体でのCO₂排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラル目標と、2030年までのCO₂排出量削減目標を設定し、気候変動への対応を推進しています。
(注1) TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
G20からの要請を受けて、大手企業、信用格付機関など世界中の幅広い経済部門と金融市場のメンバーによって構成された民間主導の特別組織のことで、気候変動によるリスク及び機会が経営に与える財務的影響を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨しています。
ガバナンス
2020年に取締役会で決議した7つのサステナビリティ重要課題の中で、「環境負荷の低減」を課題として設定するとともに、「中期経営計画2023」においても「気候変動」を当社グループが解決に貢献すべき社会課題のひとつとして設定しました。
全社的なリスク管理を行うリスク管理委員会においては、気候変動リスクを重点リスクのひとつとして位置付け、取締役会の監督の下で適切にリスク管理を行っています。
また、気候変動問題はリスクのみならず、当社グループの事業機会の創出にもつながると捉え、代表取締役社長CEOを委員長とするサステナビリティ委員会において、重点的に対応を議論しています。
サステナビリティ委員会で議論した内容などについては、年に2回取締役会で報告を行い、取締役会の監督、指示の下で取り組みを推進しています。
- リスク管理委員会(2回/年)
社長が委員長を務めるリスク管理委員会では、当社グループにおける影響の大きなリスクを特定し、その軽減に向けた対応を行います。
- サステナビリティ委員会(2回/年)
社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会では、重要課題の対応進捗状況を審議し取締役会への報告を行います。

- 関連参照先;
戦略
世界的な気候変動対応として2016年11月に発効した「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃以下に抑える努力が求められています。そのため当社グループはパリ協定に沿った長期的な計画を策定して対応しています。
各シナリオにおけるリスク評価
戦略立案の最初のステップとして、気候変動が当社グループに及ぼす影響を評価しました。リスク評価の対象期間については、当社グループ製品に対する気候変動の影響が既に顕在化していることから、直近10年間と設定しました。その上で、1.5℃と4℃の2つのシナリオで分析を実施しました。
- 11.5℃シナリオ:今世紀末の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃以下に抑えるシナリオ
- 24℃シナリオ:効果的な対策が実施されず、今世紀末の平均気温が産業革命以前に比べ4℃上昇するシナリオ
その結果、規制強化による事業への影響を最大のリスクとして特定し、重点的に対策を行うこととしました。
- 1.5℃シナリオ
- 本シナリオでは、CO₂排出量削減に向けた規制強化による事業活動への影響や、炭素税に代表される事業コスト負担の増加等の移行リスクが想定されます。重要度の大きいリスクとして化石燃料による火力発電への規制強化が考えられます。また、顧客の製造プロセスにおける省エネ要求の高まりから、更なる省エネ型製品の開発、提供が必要となると考えられます。一方で、建設機械などの内燃機関に対する規制強化の影響は、重機向けの代替技術の開発やインフラ整備、海外規格や各国の規制に対する調整などに時間を要するため比較的長期に現れると分析しています。炭素税や原材料費の高騰も想定されますが、全体コストに占める割合は小さいため影響は限定的と分析しています。
- 4℃シナリオ
- 本シナリオでは、異常気象の激甚化に代表される物理リスクの増大を想定しています。自然災害の激甚化を重要度中レベルと設定し、製造拠点のみならずサプライチェーン全体でのBCP強化の必要性を想定しています。また、長期的には海水面上昇による沿岸地域の製造拠点への影響が考えられるものの、10年レベルでの影響は比較的小さいと評価しています。
重要度 | リスク | 機会 | |
---|---|---|---|
1.5℃ シナリオ |
大 | 化石燃料発電規制強化 | 再生可能エネルギー安定供給 |
大 | 省エネ性能要求増加 | 省エネ製品需要増加 | |
中 | 内燃機関規制強化 | 電動化、燃料転換需要増加 | |
小 | 炭素税、原材料費高騰 | 省エネ、省資源製品需要増加 | |
4℃ シナリオ |
中 | 自然災害激甚化 | 防災インフラ整備需要増加 |
小 | 海水面上昇(長期) | 災害復旧向け建設機械増加 |
製品を通じたCO₂排出量削減に向けた施策
製品使用時のCO₂排出量削減を追求するにあたり、Scope3算定定義では当社のCO₂排出量削減にカウントできない領域も含めた、脱炭素施策の可能性を模索しています。
- 1
狭義のCO₂削減:Scope3算定定義に基づき、当社のCO₂排出量削減にカウント可能な対応 - 2
広義のCO₂削減(当社の考え方): Scope3算定定義では当社のCO₂排出量削減にカウントできないものの、納品後のバリューチェーンにおいてCO₂排出量削減に間接的に貢献可能な対応
広義のCO₂削減とは、当社グループ製品が客先納入後にCO₂排出量削減にどのように貢献するかを評価する、当社グループ独自の考え方です。例えば、顧客の生産現場での電動化や不良率減少による省資源化など、生産プロセスにおける脱炭素化に向けた支援等が挙げられます。また、当社グループはパワー半導体の製造プロセスを支える製品・技術を有していることから、パワー半導体を活用した各種製品の省エネ支援に貢献することが可能です。
このように当社グループ製品を通じて社会全体のCO₂排出量削減に貢献する施策を実施、検討しています。
カテゴリー | 具体例 | |
---|---|---|
狭義のCO₂削減 | 製品・サービスを通した社会課題の解決(CSV) | R&D強化:省エネ・脱炭素型製品の開発 |
製品ポートフォリオ変更:省エネ・脱炭素型製品へのシフト | ||
ビジネスモデル転換:機器(ハードウェア)の売り切りからサブスクリプションモデルへのシフト等 | ||
広義のCO₂削減 | 価値創造のストーリー発信 | 顧客の生産現場の省エネ・脱炭素支援:電動化、省資源化 |
顧客を通した社会全体の省エネ・脱炭素支援:蓄電で再エネ安定供給 |
事業におけるリスクおよび機会の評価
当社グループは多様な製品群を提供する機械装置メーカーです。セグメントの中でも、特に製品使用時のCO₂排出量が多く事業への影響が比較的大きいと想定される、エネルギー&ライフラインセグメント、及びメカトロニクスセグメントに焦点を当ててリスクおよび機会の評価を実施しました。
- エネルギー&ライフライン(E&L)セグメントへの影響
- 社会の脱炭素化への移行に伴い、石炭火力発電プラントの需要はすでに低下傾向であることから、当社グループはバイオマス発電プラントへのシフトを行っています。一方、カーボンニュートラルとされるバイオマス発電については、燃料の輸送時に発生するCO₂排出量等の観点から規制強化の動きが想定されるため、蓄電システム等の開発を進めています。
このような多面的な取り組みを通じて社会全体の再生可能エネルギーの安定供給への貢献を図ります。
- メカトロニクスセグメントへの影響
- 製造現場における油圧駆動機構の電動化への動きが加速する中で、インバーターやモーターの需要の増加が予想されます。そのため市場変化に適切に対応し、事業機会を拡大させることが重要課題です。また、顧客から更なる省エネ製品供給の要求が高まることが想定されることから、インバーター、高効率モーターに加えて、モーターの監視システムや電気、制御、減速機を一体で提供する新たなソリューションなどの開発を進めます。
セグメント | 主要製品 | リスク | 機会・対応 |
---|---|---|---|
エネルギー& ライフライン |
発電プラント | ・行政による石炭火力発電制限 ・未認証燃料利用のバイオマス発電についての規制強化 |
・環境負荷の小さいエネルギー供給システムへの転換需要増加 (バイオマス,蓄電事業など) ・既存石炭火力発電のバイオマス混焼改造の需要増加 |
メカトロニクス | 変減速機 | ・顧客の製造時、製品使用時CO₂排出削減要求高まりとその対応 ・行政によるモーター電力効率規制強化 |
・生産設備の電動化加速 ・高効率製品価値向上 ・電気,制御,減速機一体の需要増加 |
- 関連参照先;
リスク管理
代表取締役社長CEO以下、トップマネジメントが参加する予算審議会(2回/年開催)にて事業運営のモニタリングを実施しています。中期経営計画の策定においては、10年先の社会問題解決に向けたバックキャストを行い、各事業部門のリスク・機会を評価して事業計画を立案しています。顧客による製品使用時のCO₂排出量や、事業規模等の観点から経営への影響が大きいと想定されるセグメントを選定し、取締役会にて重点的に議論を行い改善に向けた対応を実施しています。
リスク管理委員会(2回/年開催)においては、当社グループにおける影響の大きなリスクを特定し、特定したリスクごとに発生頻度、発生時の影響の大きさを評価しながら当社にとっての重要性を評価しています。リスク管理委員会は、特定したリスクに対して対策部門を選定し、適切に管理するとともにその進捗を監督しています。気候変動はリスク管理委員会の中でも重点リスク課題に位置付けられています。
近年の異常気象の激甚化に対しては、当社グループの製造拠点、サプライチェーン全体でのBCPを強化します。2022年4月、当社グループにおけるBCP策定や実効性のあるBCPの運用を目的に、総務本部にBCP推進の専門部署を設置しました。
- 関連参照先;
指標と目標
当社グループは2022年5月の取締役会において、2050年までに当社グループ全体でカーボンニュートラル実現を目指すことを決議しました。またその実現に向けて、温室効果ガスの中でも特に発生量の多いCO₂排出量の削減を重点課題とし、2030年までに達成すべき2つのCO₂排出量の削減目標を設定しました。
1つが、移行リスクとして考えられる将来的な炭素税増加への対策を目的とした、Scope1、2※1に対する「製造拠点における排出量削減目標」、もう1つが、当社グループの事業基盤である製品・サービスの提供を通じた脱炭素社会の実現への貢献を目的とした、Scope3(カテゴリ11)※2に対する「製品使用時のCO₂排出量削減目標」です。
※1::自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス
※2: Scope3は自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出。そのうち、カテゴリー11は製造・販売した製品・サービス等の使用に伴う排出。
温室効果ガス排出量に関する目標(Scope1,2 および 3)
- Scope1,2 製品製造時のCO₂排出量削減:2030年までに50%削減(2019年度比)
製造時のCO₂排出量の削減に向けて各種施策を実施すると共に、2022年度より再生可能エネルギーの調達を開始しました。また、インターナルカーボンプライスを設定することで、当社グループ内の各部門におけるCO₂排出量を事業評価に反映していく方針です。

- Scope3(カテゴリ11) 製品使用時のCO₂排出量削減:2030年までに30%削減(2019年度比)
製品使用時のCO₂排出量削減施策として、省エネ・脱炭素に貢献する新製品や新技術の開発に加え、既存製品の内、特に環境負荷の高い製品群は、省エネ・脱炭素型の製品・機種に絞るなどの、ポートフォリオの見直しに取り組みます。
さらに、機器(ハードウェア)の売り切りからサブスクリプションモデルへビジネスモデルの転換を図り、より環境負荷の低い製品を顧客に提供するとともに、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減に取り組みます。

第6次環境中期計画における気候変動対応に関する目標
当社グループは、地球環境保全や循環型経済活動が企業の社会的責任であるという認識のもと、3年ごとに策定する環境中期計画の中で直近3年間の目標を定め、環境負荷軽減活動を行っています。現在、2020年から開始した第6次環境中期計画のもと、2022年度内の目標達成に向けて取り組みを進めています。
項目 | 目標 | 基準年度 | 目標年度 | ||
---|---|---|---|---|---|
Scope1,2 | 製品製造時のCO₂排出量削減 | 国内 | CO₂排出量(総量):3%削減 | 2019 | 2022 |
国内+海外 | |||||
国内 | エネルギー生産性:2%向上 | ||||
海外 | |||||
国内 | グリーン物流(輸送時):2019年度比維持 | ||||
省エネ投資の拡大 | |||||
重油の使用廃止(燃料転換) | - | ||||
再生可能エネルギー設備の導入検討(新規建屋) | |||||
Scope3(カテゴリ11) | 製品使用時のCO₂排出量削減 | 製品使用時の排出量目標策定 | 2008 | ||
サステナビリティプラス製品 | 製品数:23機種以上 | - | |||
候補製品の売上高比率:45%以上 | |||||
売上高比率:35%以上 |
- 活動結果につきましては、下記も参照ください。