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極低温冷凍機の技術を応用し、液化水素の貯蔵時の損失ゼロを実現 ~大気中へ放散する水素ガスを抑制し、水素社会に貢献~

2025年05月27日

住友重機械工業株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:下村真司、以下「当社」)は、水素の液化、再凝縮を可能にする極低温冷凍機(以下「冷凍機」)を開発し、その安全性と効能性を実証しました。

通常、液化水素を貯蔵する際、貯蔵容器内では液化水素が気化し、水素ガス(Boil Off Gas、以下「BOG」) が生じます。容器の内圧上昇を防ぐためには、この発生したBOGを容器内から放散する必要があり、100m3以下の比較的小型の容器では1日当たり液化水素全量の0.5~1%が減少します。そのため、BOG発生を抑制することは、液化水素を貯蔵・供給する設備において重要です。

今回、当社の技術研究所および精密機器事業部にて液化水素の凝縮用に新規開発した冷凍機を用いることで、液化水素貯蔵時に発生するBOGを完全に回収できることを確認しました。このことで、液化水素貯蔵時に放散する必要がなくなり、水素の損失をゼロにすることが可能になります。今後は、より効率性の高い冷凍機を開発し、BOG回収効率のさらなる向上や電気機器の防爆構造であるIEC-Ex国際規格認証の取得を検討します。さらに、世界で高いシェアを誇る当社の極低温冷凍機の可能性を拡げるとともに、カーボンニュートラル社会の実現へ貢献します。

(開発した冷凍機のイメージ ※実際の冷凍機とは異なります)


【開発の背景】
カーボンニュートラル社会の実現に向け、国内外で水素の利活用の動きが加速しています。液化水素は高純度な水素を直接供給できることから、特に燃料電池への用途で着目されています。しかし、液化水素は沸点がマイナス253℃と低いため、BOGの発生を避けることが困難です。現在は、安全のために大気中へ放散する場合が多く、補充に費用が発生するなど経済的な損失を伴う点が課題です。

【冷凍機の特長】
・当社のGM冷凍機(※1)をベースにした本冷凍機は、独自に開発した熱交換器を介して、冷凍機で発生した冷熱を貯蔵容器内の水素ガスに効率的に伝えます。
・マイナス253℃の極低温環境を効率良く生成し、液化水素から発生するBOGを完全に抑制できることが可能になります。また、再凝縮によって貯蔵容器内に回収した水素の量(本来損失となっていた水素の量)は、冷凍機の稼働に掛かる電気代を十分に賄うことができます(※2)。
・可燃性ガスでもある水素の万が一の漏出を十分に考慮した防爆構造も新たに設計し、法令を順守する仕様になっています。


(※1) Gifford-McMahon冷凍機の略。熱交換用の蓄冷材をシリンダ内で往復動させながら冷媒ガスの膨張を繰り返すことで寒冷を発生させる機械駆動式冷凍機です。当社は特に医療装置MRI用として世界ナンバーワンの納入実績を持ちます。

(※2) 水素の価格について。2030年の国内目標価格である30円/Nm3で計算。なお、現在の国内価格は150円/Nm3