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大阪大学核物理研究センターTATサイクロトロン棟での 共同研究について

2024年03月07日

住友重機械工業株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:下村真司、以下「当社」)は、アルファ線核医学治療の社会実装を加速させるため、国立大学法人大阪大学、東芝エネルギーシステムズ株式会社およびアルファフュージョン株式会社と協力し、アルファ線放出核種アスタチン-211の製造から抽出、精製、合成に至るまでの共同研究を行います。

アルファ線核医学治療は、がん細胞を破壊するための放射性核種のアルファ粒子を使用するがん治療法です。特に難治性のがんに対して有効であると期待されています。

今回、共同研究を行うにあたり、2024年2月に大阪大学核物理研究センターは、アルファ線放出核種アスタチン-211の加速器による大量生産を目指し、経済産業省の支援を受けてTATサイクロトロン*棟を建設し、当社はアルファ線放出核種アスタチン-211専用加速器およびアルファ線放出核種アスタチン-211製造装置の設置を2026年前半に予定しています。

■アルファ線放出核種アスタチン-211を用いたアルファ線核医学治療について
アルファ線核医学治療は、がん細胞に選択的に蓄積する標的剤とアルファ線放出核種を組み合わせることで、体内で直接がん細胞にアルファ線を照射し治療する新しい方法です。アルファ粒子は破壊力が高いものの、体内での進行距離が短く、これにより周囲の正常細胞への影響を最小限に抑えつつ、効率的にがん細胞を破壊できます。
また、近年、アルファ線放出核種であるアルファ線放出核種アスタチン-211を用いたアルファ線核医学治療が注目を集めています。これは、アルファ線放出核種アスタチン-211が加速器で製造可能であり、日本の製薬企業が強みとする低分子や中分子に導入ができるためです。

■アルファ線核医学治療の社会実装によるイノベーションの創出
難治性進行がんへの新治療法であるアルファ線核医学治療は、外来での治療が可能であり、患者のQOLを顕著に向上させることができるため、国内外で医療イノベーションを促すと期待されています。
当社は、この共同研究を産学連携で行うことによって、アルファ線放出核種アスタチン-211を用いたアルファ線核医学治療の早期社会実装を目指してまいります。

*TAT…Targeted Alpha Therapyの略で、アルファ線核医学治療を意味します。
当社はこれまで国内100施設以上のPET検査用小型サイクロトロン(負イオン加速型、加速エネルギー7~20 MeV)の納入実績を有しています。アルファ線放出核種アスタチン-211の製造用としては、比較的大型で正イオン加速型かつ加速エネルギー30MeV程度の中規模サイクロトロンが必要です。これまで、類似のサイクロトロンシステムを福島県立医科大学に納入済みです。

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