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加速器を用いたBNCT治療システムの国内製造販売承認事項一部変更承認取得のお知らせ

2022年07月20日

住友重機械工業株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:下村真司)は、BNCT治療システムNeuCure®について、延長コリメータ追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得しましたのでお知らせします。延長コリメータの使用により、患者様の治療中の体位を柔軟に設定することが可能になり、より楽な姿勢で効率的な治療が期待されます。

【延長コリメータの概要】
当社のNeuCure🄬は、加速器から水平方向に取り出された陽子ビーム(赤線)を中性子に変換して(青線)患部に照射します。(下図ご参照)中性子は他の放射線とは異なり、空気による散乱の効果が大きいため、中性子照射口(コリメータ)に患部を密着させる必要があります。下図では座位による例ですが、臥位でも同様です。

これまでのコリメータでは、患部の位置や患者様の関節の可動域によっては、患部を照射口に密着させることが難しい場合がありました。今回追加承認された延長コリメータを用いることにより 患者様の治療中の体位を柔軟に設定することが可能になり、より楽な姿勢で効率的な治療が期待されます。

下の図は延長コリメータの写真です。左の写真が既承認の延長の無いコリメータで、中央、右のコリメータが患者側にそれぞれ50mm、100mm延長されたコリメータになります。  

【BNCT治療システムNeuCure®(ニューキュア)】
本システムは、当社が約50年間にわたり蓄積してきた物理研究用および医療用サイクロトロンとそのビーム制御技術にもとづいて開発した高電流タイプ30MeV AVFサイクロトロンとそのビーム制御システムをベースに、2007年から開始した京都大学複合原子力科学研究所(大阪府泉南郡熊取町)との共同研究により開発した医療用中性子照射装置です。サイクロトロンから取り出される陽子ビームを中性子に変換するターゲットにはベリリウムを用い、医療機関等に求められる安全性、安定性に優れているのが特徴で、病院内への設置が可能になりました。

加速器を用いたBNCTシステムおよびBNCT用サイクロトロン
BNCT治療室および移動式治療台

【参考】BNCTは、がんの放射線治療の一種であり、その治療法は、がん患者にがん細胞に選択的に取り込まれるホウ素(Boron-10)を含有するBNCT用ホウ素薬剤を投与し、がん細胞内にホウ素(Boron-10)を選択的に取り込ませた後、体外からエネルギーの低い中性子を照射するというものです。このとき、体内ではホウ素(Boron-10)原子核が中性子を捕獲して核分裂反応を起こし、この核反応により細胞にダメージを与えるエネルギーをもつα粒子(ヘリウム原子核)とLi 反跳核(リチウム原子核)が放出されます。これらの荷電粒子は、体内ではそれぞれ約9μmおよび約4μmの飛程しか持たず、この飛程はおよそ細胞1個分の大きさに相当します。これらの特徴により、理論的には、周囲の正常な細胞等をほとんど傷つけることなく、ホウ素(Boron-10)を取り込んだがん細胞を細胞レベルで選択的に破壊することが可能となります。