お知らせ

PET用の超小型サイクロトロンシステムを受注

2001年07月17日

住友重機械工業株式会社(社長 日納義郎)は、厚地(あつち)病院PETセンター(仮称):(医院長 厚地政幸 鹿児島県鹿児島市)からポジトロン※1断層撮影(以下、PET※2)装置用の超小型サイクロトロン※3システムを受注しました。

今回受注したシステムは、ポジトロン放出核種を製造するサイクロトロン「サイプリス-MINItrace」と、体内に投与する標識化合物を合成するRI合成装置です。「サイプリス-MINItrace」はRI製造用のサイクロトロンとしては最小クラスのコンパクトな機器で、設置面積を抑えて院内のスペースを有効に活用できます。PETで腫瘍検査に使用されるFDG※4を製造するための最適なシステムです。
厚地病院PETセンターは、九州の民間医療機関では初めてPET設備を導入します。FDGを用いたがん検診で従来とくらべ20倍のがんの検出率を目指します。装置は2002年6月から稼動する予定です。

PETはX線CTやMRIなど、生体の形態情報を得る従来の断層撮影法とは異なり、体内で刻々と変化する脳血流や酸素供給などの機能情報を得ることができる最先端の検査方法です。ごく短い寿命の放射性同位元素(RI)を含む化合物を検査目的別に合成し、薬剤として体内に投与します。体内でRIが放出する放射線の分布をPETカメラに捉え、映像化して診断します。現在全国19都道府県、37ヵ所で稼動しており、早期発見やがん治療後の効果判定時間の大幅な短縮、更には脳の活性状態の判定などで成果を上げています。

当社は1979年に日本初のPET用サイクロトロンを手がけており、この分野で国内最多の全国20ヵ所の医療機関や研究機関に装置を納入しています。
今回の受注にあたり、加速器における当社の技術力とこれまでの実績が評価されました。




「CYPRIS」は住友重機械工業の登録商標です。

[ご参考]
※1:ポジトロン
ポジトロンとは陽電子のことです。ポジトロンを放出する元素は「ポジトロン放出核種」と呼ばれRI(炭素、フッ素などの放射性同位元素)の一種です。

※2:PET(ペット)=ポジトロン・エミッション・トモグラフィー
生体内の代謝機能に関して定量的なデータを得ことができる先端の検査で、放射性同位元素を体内に投与し放射性同位元素から出てくる陽電子と電子の結合によって放出される光子を検出することにより、患部を見つけます。
PETに使用するRIの製造には小型のサイクロトロンを使用し、また、RI合成薬剤の製造にはRI合成装置を用います。

※3:サイクロトロン
サイクロトロンは粒子を電気の力によって加速する装置です。
磁場方向に対し垂直な面で旋回運動する荷電粒子の旋回に、同期した高周波による電界の力により加速させます。
PET用途のほか、半導体用に照射する低エネルギー・タイプから核物理学用に使用される高エネルギー・タイプまで様々な種類があります。当社では1972年に1号機を納入しています。

※4:FDG
FDG=フロロデオキシグルコースぶどう糖代謝を測ることによって腫瘍の診断に用いる化合物。
悪性腫瘍の場合はFDGが多く取り込まれるので、早期にその有無の判断ができます。