特集
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キャリア

愛媛製造所という住友重機械における先端の技術拠点では、どのようなキャリアが描けるのだろうか。
産業機器事業部でアルファ線核医学治療用のサイクロトロン(加速器)開発に携わる
若手エンジニアと、その教育担当であるプロジェクトリーダーに、
お互いの関係性や配属後の成長と今後の展望について語り合ってもらった。
産業機器事業部 医療・先端機器統括部
設計部 加速器システムグループ
2012年入社
K.T.

- 経歴
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2012年~ 技術研究所に配属。BNCT用中性子検出器の開発を行う。 2015年~ 陽子線治療装置のビーム調整手法とアシストソフト開発に従事。
その後、陽子線治療装置用の超電導サイクロトロン開発を担う。2019年~ 産業機器事業部へ異動。次世代陽子線治療装置の開発に携わる。 2020年~ アルファ線核医学治療用サイクロトロン開発の事業化検討を開始。 2021年~ 同サイクロトロン開発のプロジェクトリーダーとなり、
ビジネス開発にも力を注ぐ。
2020年入社
S.H.

- 経歴
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2020年~ 産業機器事業部に配属。台湾の病院にて陽子線治療装置の調整を担当。
その後も陽子線治療機種に携わる。2021年~ アルファ線核医学治療用サイクロトロンの開発プロジェクトに参画。

Talk_01
チャレンジ意欲を買われて、
プロジェクトに抜擢
- S.H.
- K.T.さんには導入3カ年教育で私の教育担当になっていただいて以来、ずっとお世話になってきました。もう5年前になりますが、新人の頃の私の印象を覚えていますか。
- K.T.
- もちろん。最初は少し頼りない感じもあったけど(笑)。技術的な話題になると、楽しげに熱弁しているのが印象的で、「根っからの技術者なんだな」と思いましたね。
- S.H.
- 私はK.Tさんのことを、頭の回転が速くて面白い方だと感じていました。同時に、後輩の私をあたたかい目で見守ってくれる存在でもありました。今回のアルファ線核医学治療用のサイクロトロン開発でも、私にチャレンジの機会を与えてくれましたし。
- K.T.
- 私は教育担当としてS.H.さんの意思を尊重したいと考えていたので、陽子線治療装置の調整を終えて台湾から帰って来た後に、「一番やりたいことは何か」を聞いたんですよね。すると「サイクロトロンの設計」と言ってくれた。サイクロトロンの設計は難易度の高い仕事ですが、それにチャレンジしようというモチベーションがある人なら、きっと上手くいくと思って、アサインしたんですよ。
- S.H.
- 私は、大学院で研究していたサイクロトロンを通じて医療に貢献したいという想いで入社したので、産業機器事業部に配属されたからには、開発を一通り経験してみたかったんです。
- K.T.
- 今我々が取り組んでいるアルファ線核医学治療は、アルファ線放出核種であるアスタチン-211を含む薬剤を患者さんに注射すると、アスタチン-211から放出されたアルファ線ががん細胞を破壊するというもの。この画期的な治療法に不可欠なのがアスタチン-211をつくるためのサイクロトロンで、S.H.さんにはプロジェクトの始動時からその物理設計を担当してもらっています。
- S.H.
- 住友重機械は日本で唯一のサイクロトロンメーカーで、国内外に多くの納入実績がありますが、今回のプロジェクトではアスタチン-211を短時間で大量につくるため、サイクロトロンをアップグレードして、ビームの生成量を増やすことが求められました。


Talk_02
サイクロトロン設計の頼もしい
後継者に成長
- K.T.
- ビーム量の目標数値は、従来の約7倍。世界最強を狙っているので、S.H.さんにはかなり高いハードルを課すことになってしまいましたね。
- S.H.
- 最初はとにかくがむしゃらに、目の前の課題に立ち向かっていく日々でした。そもそもサイクロトロンの設計自体が初めてだったので、事業部内にいる第一人者に手順を教えてもらい、新しい解析ソフトの導入や、使い方の習得を経て、設計実務に入りました。
- K.T.
- あの頃は、それこそ悶絶するほど苦労していたのを知っていますが、それでも「この結果が出るまでは帰らない」とか、強い信念を持って各工程をやり遂げてくれた。そのおかげで、プロジェクトを進めてこられました。
- S.H.
- こちらこそ、いつも親身な指導やアドバイスをいただいて、感謝しています。特に忘れられないのは、シミュレーションコードを使って設計し、出てきた結果を見せに行った時、いつにない厳しめの指摘をされたことです。K.T.さんが求めていたのは、「その結果を見てどう思うのか」「次にどんなアクションを取る考えなのか」ということで、設計者として大切なものの見方や考え方を、これまでいろいろと学ばせてもらいました。
- K.T.
- S.H.さんはエンジニアとして今後も長くキャリアを重ねていくと思うので、単に計算や設計のスキルを養うというよりも、「そもそもこれは何のためにやっているのか」と原点回帰して考える視点や、先を読んで動くといった姿勢を身につけてほしい、と願ってきました。そうでないと、仕事が形骸化した作業で終わってしまいますし、オリジナリティも出ませんからね。
- S.H.
- 今の私があるのは、本当にK.T.さんのおかげですね。
- K.T.
- いやいや。S.H.さんの成長は目覚ましく、ここ1、2年は、私と同等かそれ以上のアウトプットができるまでになってくれたので、技術的なことは任せて安心と思っています。サイクロトロンの設計ができる有識者は事業部内でも限られますが、S.H.さんがその後継者に育ってくれたことは、私にとっても誇りなんですよ。



Talk_03
画期的ながん治療法を、
愛媛から世界に普及させる
- K.T.
- 技術の継承と言えば、部内にいるサイクロトロンの第一人者は、CERN(欧州原子核研究機構)の職員にも尊敬されている、この道の権威。そうした有能な専門技術者が集まってくるのも、住友重機械の特長だと思いますね。
- S.H.
- 私は、わが子を育てるような感覚で製品と向き合えるのが、産業機器事業部の魅力だと感じています。設計担当者が、試験や製造を経て、据付にまで携わり、現地でつきっきりの調整にもあたるので。
- K.T.
- 私は現在、アルファ線核医学治療を社会実装するために、新事業の立ち上げ活動も行っているのですが、そんな風に自ら事業を興し、新たなマーケットを創出していく提案ができる会社も、なかなか無いでしょうね。
- S.H.
- アルファ線核医学治療は、がん治療のあり方を劇的に変えると予想されていますよね。
- K.T.
- まさにそう。がんは見つかったら注射だけで治せる時代になる。外科手術や化学療法などがメインで利用されてきた従来の治療構造を一変させるはずです。医療費も大幅に削減できる見込みなので、治療を受ける側も、それを補助する政府側も恩恵を受けられます。そんな未来を早期に実現するためにも、サイクロトロン開発をいち早く達成し、愛媛製造所から世界に向けてアルファ線核医学治療を普及させていきたいですね。
- S.H.
- K.T.さんは最近、事業開発や普及のために世界を飛び回っておられ、手の届かない遠い存在になってしまった気がします(笑)。
- K.T.
- いや、私が事業化推進に専念できるのは、技術的な部分をすべてS.H.さんに任せられるからこそですよ。
- S.H.
- サイクロトロン開発は現在、工場での組立工程にあり、組み上がり次第、試験フェーズに入ります。これからがいよいよラストスパートです。
- K.T.
- ここまでの計算や設計は概ね正しいと思いますが、完璧ではないはずです。それを現場で詰めていくフェーズでは、臨機応変かつスピーディな課題解決が求められ、精神的にもハードになるでしょう。
- S.H.
- 今からとても緊張しますが、仕様を達成できるように頑張ります!

