お知らせ 2018年度
お知らせ
「台湾・高雄長庚紀念病院における陽子線治療の開始」

2019年02月05日

台湾・高雄長庚紀念病院における陽子線治療の開始
(高速スキャニングシステムを初導入)


住友重機械工業株式会社(社長 別川俊介/以下、住友重機械)は、台湾最大の民間病院グループ・長庚紀念病院(Chang Gung Memorial Hospital、以下、CGMH)の1つである高雄長庚紀念病院(台湾・高雄/以下、CGMH高雄)に陽子線治療*1システム(以下、本システム)を納入し、2018年10月29日に陽子線治療施設のオープンニングセレモニーが開催されたことを報告します。住友重機械が本システムを納入した林口長庚紀念病院(同グループ基幹病院)に続き、今回のCGMH高雄は台湾で2番目の陽子線治療施設開業となります。

本システムは、連続かつ高線量率ビームを発生するサイクロトロン*2及び、回転ガントリ治療室3室で構成され、スキャニング専用ノズル(G1室及びG2室)及び多目的照射ノズル*3(G3室)をそれぞれ有し、将来的には回転ガントリ治療室1室の増設が可能な構成となっています。また、各治療室にはコーンビームCTによる3次元画像照合が可能な画像誘導システムを具備すると共に、G2室には陽子線照射時に体内の核破砕反応から発生するポジトロン核種(11C、15O等)を検出することで照射結果の可視化を行うシステム(オンラインポジトロン放射モニター装置)が具備されています。

スキャニング照射法は細いビームを標的がん組織の形状に合わせて三次元的に照射する手法であり、従来の一般的照射法である拡大ビーム照射法*4と比較して、より複雑な形状のがんの治療を実現し、周囲の正常組織への照射線量を抑えることが期待されています。また、拡大ビーム照射法において患者毎に製作するビーム成形器具(ボーラス及びコリメータ)が不要となり、治療準備作業やランニングコストの大幅な低減に寄与します。住友重機械はスキャニング手法としてラインスキャニング照射法*5を採用しており、2015年10月の治療開始以来、その治療数は飛躍的に増加し、現在では5施設にて累計約2,000名の治療が行われています。

CGMH高雄では新開発の高速レイヤー切替えシステムの採用により、スキャニング照射における各層切り替え時間を従来システムよりも80%以上短縮し、標的腫瘍への照射時間の大幅短縮を図ります。このシステムにより、特に肺や肝臓のような呼吸移動性臓器への治療において、息止め法や呼吸同期法との併用により効果が期待されます。


 CGMH高雄のDr. Eng-Yen Huang (Director, Department of Radiation Oncology)は「陽子線治療は正常組織への副作用を抑えつつ、標的がん組織への治療効果を高めることができる画期的な放射線療法であり、その臨床的有用性や対象疾患の拡大が世界中で報告されています。我々は台湾で2番目にこの治療を提供することを誇りに思うと同時に、癌に苦しむ世界の多くの患者に高水準の医療を提供する責任を感じています。今後も住友重機械との協力体制により、陽子線治療のさらなる技術開発及び普及を目指した取り組みを行っていきます。」と述べています。

CGMH高雄について
CGMHは台湾最大の民間企業グループである台湾プラスチック(Formosa Plastics Group)の直営病院であり、8つの病院(総病床数約7,500)を有する台湾最大の民間病院グループです。住友重機械は基幹病院であるCGMH林口に本システムを納入し、2015年11月の開業以来、1,500名以上の治療が行われております。CGMH高雄(病床数 2,686)は台湾南部最大の都市・高雄の中心的病院であり、多くの優秀な医療スタッフと最先端医療設備を備え、グローバルな診療、研究、教育を推進しています。

住友重機械について
住友重機械はこれまで40年以上に渡り、サイクロトロン等、加速器の医療分野での利用に関する研究・開発・機器納入を続けてきました。陽子線治療システムは1997年に国内初(世界で2番目)となる病院設置型システムを国立がん研究センター東病院に納入したことを皮切りに、現在までに日本、台湾、韓国の7施設に納入しました。引き続き、納入先施設と協力のうえ、陽子線によるがん治療の全世界への普及に貢献してまいります。

  • 1 陽子線治療:
陽子線は荷電粒子線の一つで、水素の原子核である陽子を高エネルギーに加速することで得られる放射線です。陽子線を人体に照射した場合、一定深さで急激にエネルギーを放出(「ブラッグピーク」と言います。)し消滅するという、一般的な放射線治療で使われるX線にはない物理特性があります。陽子線治療は放射線治療の一種であり、このブラッグピークの深さや幅を調整することにより、近接する重要臓器(脳、心臓、腸管系臓器など)や周囲の正常組織に悪影響を与えずにがん組織のみに十分な線量を投与することで、副作用の少ない治療が可能です。一般的な外科手術と異なり、体に優しく、通院治療が可能ながん治療法として、世界中で脚光を浴びています。これまでに、頭頸部がん、肺がん、肝臓がん、食道がん、前立腺がん等の疾患に対して多くの治療実績が報告されています。

  • 2 サイクロトロン:
円形加速器の一種。水素の原子核である陽子を光速の60%程度まで加速し、透過力の大きい陽子線を発生させます。他方式の加速器よりも高線量かつ連続的なビームを安定に発生させることが可能であり、ラインスキャニングへの優れた適応性、肺や肝臓等の呼吸で動く臓器への照射の適応性に優れ、治療時間の短縮や治療回数の低減を実現させる能力を有します。

  • 3 多目的照射ノズル:
拡大ビーム照射法*4とスキャニング照射法の両方の機能を有する照射装置であり、対象患者毎に両照射法のランダムな切り替えが可能という特徴を有します。

  • 4 拡大ビーム照射法:
陽子線発生装置から発生されたビーム径を大きく広げた上で、患者毎に製作するビーム成形器具(コリメータ及びボーラス)を使用して、標的がん組織の形状にビームを成形して照射する方法です。

  • 5 ラインスキャニング照射法:
スキャニング手法の一つであり、ビームの走査速度を変調させつつ、連続的に(一筆書き状に)照射する手法です。ビームを断続的に照射するスポットスキャニング照射法*6などの他スキャニング手法と比較して照射時間の短縮が見込まれます。

  • 6 スポットスキャニング照射法:
スキャニング手法の一つであり、患部を数千の微少領域に分割し、最深部の層から小さな点状のビームで照射位置を逐次変えながら層全体に対し均一的な照射を行う方式です。