vol.6 社会と地球環境に貢献する蒸気タービン

風車にふーと息を吹きかけると、風車が勢いよく回り出します。これは、羽根車に吐息の力が加わることで風車が回転するためです。蒸気タービンもその原理を利用します。その原理は紀元前から考えられていたといわれ、現在の電力発電には欠かせない当たり前の装置ですが、高効率・高信頼性・低コストをめざす技術革新はいまなお続いています。

広島県呉市で生まれる蒸気タービン。発電所や工場のなかで欠かせない原動機

広島県呉市で生まれる蒸気タービン。発電所や工場のなかで欠かせない原動機

蒸気タービンは、ボイラでお湯を沸かして発生させた高温高圧の水蒸気を、ノズルを通して噴出・膨張させながら方向を定め、それを羽根車(ロータ)に吹きつけて回転エネルギーに変換する装置です。

羽根車(ロータ)の回転は、水車や風車のようにそのまま動力として用いることができます。あるいはそれによって発電機を回し、電気を起こすこともできます。蒸気タービンは、火力、原子力、地熱、バイオマスなどさまざまな燃料を使う発電所において欠かせない原動機になっています。他にも大型船舶の推進装置として広く使われていますし、小型の蒸気タービンは石油化学プラントのポンプやコンプレッサの原動機としても利用されています。

住友重機械グループでは広島県呉市にある新日本造機が蒸気タービンの開発・製造・販売を一手に担当しています。同社の製品は、主に一般産業用の自家発電設備として多く用いられており、そのうちの多くはバイオマス発電です。

要素技術の研究については新日本造機と住友重機械工業が共同で行い、住友重機械が受注した発電プラント工事に、蒸気タービンを一体設備として納品することもよくあります。

軸方向に排気してエネルギーの損失を防ぐ。「軸流排気型」など多様なラインアップ

軸方向に排気してエネルギーの損失を防ぐ。「軸流排気型」など多様なラインアップ

蒸気タービンにはいくつかの構造上の違いがあります。

蒸気タービンで使用した蒸気は、復水器によって冷却凝縮されて水に戻され、再びボイラ内に送られるという動きを繰り返しますが、そのときのタービンの排気圧力を真空とし、蒸気の持つ熱エネルギーを無駄なく機械エネルギーに変換することができる蒸気タービンを「復水式」と呼んでいます。排気圧力が大気圧力以上となる「背圧式」に比べ、2倍程度の出力を出すことができます。

住友重機械グループの復水式蒸気タービンにはさらに構造上の改良が加えられています。従来の復水式では排気を軸と直角方向(上または下)へ排出し、復水器へ戻すのが一般的でした。しかしこれでは排気の損失が大きく、下排気型の場合には高床設置の為、基礎や建屋の建設コストも大きくなります。 上排気型の場合には、低床となりますが、排気損失が更に大きくなる事と、メンテナンス性で不利となります。 そこで、排気を軸方向(水平方向)へ送り、復水器を直結することができれば、より狭いスペースに設備を置いたり、排気損失を低く抑えることができます。さらに保守点検の面でも有利になります。

この「軸流排気型」と呼ばれる蒸気タービンの設計には新日本造機のノウハウが込められています。同社はこの軸流排気型を数千kW の小型機から100MW クラスの大型機までラインアップ化しています。

この軸流排気型と従来からの下排気型や上排気型、また内部抽気や外部抽気などさまざまなタイプを組み合わせながら、お客様の多様なニーズに応えることができます。

東南アジアのバイオマス発電で高い導入実績。地球温暖化防止に一役

東南アジアのバイオマス発電で高い導入実績。地球温暖化防止に一役

蒸気タービンの構造は大きく羽根車(ロータ)、軸受け、ノズル、ケースなどからなりますが、550℃にも達する高温の蒸気が通過し、過酷な環境にさらされる装置ですから、設計、材料調達、製造、組立、試験、品質保証、出荷、取付の全工程において緻密な管理が必要になります。とりわけ、軸ローターに何百枚と取り付けるタービンブレードの設計・組立では、稼働時に損傷が生じないよう細心の注意が必要です。ものによっては装置外径が3メートルにもなる大型装置ですが、ものづくりにおいての気配りやきめ細やかさが欠かせません。

住友重機械グループの蒸気タービンが日本国内で最もよく使われているのは、ごみ焼却場に併設された発電所です。都市ごみを焼却炉で燃やす際に発生する熱で蒸気をつくり、その蒸気で蒸気タービンを駆動させ発電します。

近年の販売先は主に海外で、なかでも電力需要の高まるタイ、マレーシア、インドネシアなど東南アジアのバイオマス発電では、新日本造機の蒸気タービン技術が高く評価され、導入事例が増えつづけています。バイオマス発電では、木質バイオマス以外にも、この地で多く産出されるサトウキビの絞りかす(バガス)やもみがら等の農業廃棄物を燃料とする例も多く見受けられます。

一方、天然ガスを燃料とし、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電効率を高めたガスタービンコンバインドサイクル発電設備も市場として浮上しています。

蒸気タービンの原理は古く紀元前には考えられていたといわれます。発電用の蒸気タービンにも120年以上の歴史があります。しかし、CO2の発生を可能な限り抑え、地球温暖化防止に役立つ高効率発電の基幹装置として、高効率・高信頼性・低コストをめざす技術革新はいまなお続いています。

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