お知らせ

サイクロトロン中性子照射システムとホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治験(第Ⅱ相試験)開始について

2016年02月29日

住友重機械工業株式会社(社長 別川俊介/以下、住友重機械)、ステラファーマ株式会社(社長:浅野智之)は、一般財団法人脳神経疾患研究所(理事長 渡邉一夫)に委託して、再発膠芽腫を対象としたBNCT第Ⅱ相試験(以下、本治験)を開始します。悪性脳腫瘍の中でも最も予後の悪い癌である膠芽腫で、すでに腫瘍摘出術、放射線治療、テモゾロミド等の治療を受けられた後の再発患者を対象にします。本治験は2016年1月より開始し、膠芽腫患者24名を予定しています。2012年に京都大学原子炉実験所と大阪医科大学で開始した再発悪性神経膠腫を対象とした第Ⅰ相試験で、安全性と忍容性が確認できた最大線量にて本治験を行い、BNCTの有効性を確認する計画です。

<BNCTとは>
BNCT(※)と呼ばれるがん治療法は、がん細胞に取り込ませたホウ素(Boron-10)に弱い中性子をあてることにより生じる核反応によって、ホウ素を取り込んだがん細胞を選択的に、破壊する治療法です。原理上、まわりの正常細胞は傷つけず、がん細胞だけ死滅させることが可能なため、他の放射線治療とは異なるユニークな放射線治療法です。従来のBNCTは中性子を取り出すのに実験用原子炉を使って行われていましたが、今回のBNCTは原子炉ではなく、京都大学原子炉実験所と住友重機械工業が共同開発したサイクロトロン中性子照射システムを使用するため、病院内にでも実施できるようになりました。このため、今後BNCT普及の第一歩となることが大いに期待されています。
※BNCT =Boron Neutron Capture Therapyの略:ホウ素中性子捕捉療法

<ホウ素薬剤「治験薬SPM-11」について>
ステラファーマ株式会社より開発されたBNCT用のホウ素薬剤です。ステラファーマの親会社であるステラケミファの研究開発の結果、他社に先駆け同位体濃縮ホウ素(Boron10)化合物の量産技術開発に成功しました。

住友重機械はこれまで30年以上にわたり、PET、陽子線治療装置など加速器を中心にした最先端のがん医療技術の研究・開発を続けてきました。BNCTについても、京都大学原子炉実験所、ステラファーマ株式会社と共同で技術開発を進めてきました。今回、本システムの医療機器化を図ることで、がんの診断から治療まで総合的な最先端技術の普及に、世界に先駆けて貢献してまいります。

加速器(一般財団法人脳神経疾患研究所)
加速器(一般財団法人脳神経疾患研究所)
治療室(一般財団法人脳神経疾患研究所)
治療室(一般財団法人脳神経疾患研究所)